中田ヤスタカが描く歌詞の世界

是非、渋谷慶一くんに「capsuleにおける躁と鬱」について書いてもらいたいのだけれど。
このまえもピチカート・ファイヴで同じようなことを書いたよね。
明らかに病的なぼくみたいな人間が書くと、どうしたって内省的な自己否定を込めた印象批評になってしまうんだよね。その点、理論派の渋谷くんにクールに書いてもらいたいのだけれど。


capsuleの「グライダー」については以前書いたと思う。
あのときは自分がラリってた(爆)せいもあって、とにかくあの唄の世界観をトリップ(=浮遊感)に結びつけようと、いささか強引な論調になってしまった。

そもそもぼくが中田ヤスタカというアーティスト(クリエイター)を知ったのはPerfumeがきっかけなのだけれど、そのPerfumeに「エレベーター」というアルバム未収録の名曲がある。
シングルのカップリングということもあってあまり人気曲ではなかったのだが、CSで放送されていたPerfumeの番組の企画としてこの曲のPVが作られ、You Tubeニコニコ動画で紹介されるや否や一気に「裏ベスト」的な支持を得るほどにまでなった。

ピコピコしたかわいらしいイントロから始まるエレ・ポップで、印象的なAメロを繰り返していくという音楽的にも実験的かつ完成度の高い作品だとぼくは思っている。
一方ファンのあいだでは評価が二分され、「詞が暗い」とか「内省的すぎる」という否定的な意見と、「心の奥の深いところまで描いている」や「思わずグッと来た」という好意的な意見があり、そのいずれも歌詞についてであって、サウンドに関してはおおむね好評のようだ。

個人的な趣味を云わせてもらえば、この「明るい(エレ・)ポップ」に乗せた「やや暗い歌詞」という構図のアイドル・ポップスがだいすきだ。
余談だが中嶋美智代(現・ミチヨ)から大森玲子(現・相原玲)あたりを題材に、「クラスで目立たない女の子のけなげな想いを唄にしたアイドル歌謡論」を構想して、もう10年になる。

閑話休題
中田ヤスタカの、とくにさいきんのcapsuleの楽曲はアレンジもメロディ・ラインもキャッチーで、聴いている側をアッパーな状態に持って行ってくれるが、初期(アルバム2枚くらいか)の作品には、どこはかとなく影を含んだせつない唄が多い。(マイナー・コードも多い)
capsuleはいまや波に乗ってイケイケ状態だが(笑)、中田ヤスタカが手掛けるB級アイドルはキラキラしたサウンドでコーティングされつつ、メロディや歌詞に「痛い」部分が多い。
そして、その「痛み」とは(歌っているアイドルを含めた)女性側の心理よりも、聴き手側である男性が「(こういう女の子って)痛い」と感じる痛みなのである。
具体的な話は、もうすこしアイテムが揃って分析が済んだら是非書いてみたいと思う。理想としてはぼくが思い付いたことを、渋谷くんに文章化してもらうともっともらしくなるんだけどね。