Loose,Snooze and Daze

学生時代(とくに高校時代)、授業のほとんどを自称睡眠学習に費やしていたぼくだが、さすがに朝の一限目から帰るまで一日じゅう眠り続けたという覚えはさすがにない。
ただ、この居眠りグセは社会に出ても態を潜める気配はないようで、これまで数々の職種・仕事場で惰眠を貪っては上司に目を付けられ、同僚からは呆れられ、肩身の狭い思いをしながら働いてきた。
その度に、いろいろなひとから、さまざまなことを根掘り葉掘りあれこれと訊かれたが、薄ら笑いを浮かべてのらりくらりとその場しのぎで交わしていって、言い訳や言い逃れはしてこなかった。
数年まえ、主治医の口から「ナルコレプシー」と告げられ、なるほどそうだったのかとはっきり納得できた。だが、もちろん、その後も未だに勤務中に居眠りをして注意を受けたりはするけれど、相変わらず理由らしきことは口にせず、誤魔化し続けている。云うまでもなく病名はおろか、病気のことも話したことはない。


話を冒頭に戻すと、既に書いてきた通り、働くようになってからも相変わらずよく勤務中に居眠りをしているが、学生時代同様さすがに始業時間から終業時間までずっと寝続けたという経験はない。
正確には「なかった」と云うべきか。

昨日の帰り掛けもそうだったのだが、今日は出社するとまず2Fでの作業だった。
熱気は高いところに溜まるし、基本的に資材を置いておくような場所なので冷房もない。昨日は気温も高かったし、午後だったのでものの数分でTシャツの色が変わるほど汗でびっしょりになった。
幸い今日は朝方雨が降っていたし、時間的にもまださほど暑くはなっていなかったのだが、ふと気が付くと手から物を落としたり、うとうとと眠ってしまっていた。
なんとか作業を終えると、次はぼくがもっともすきな単純作業だった。まだ手つかずの状態だったので、これで今日明日と今週はひとりで淡々と作業ができる、と喜んでいた。

ところが、じっさいに作業を始めると予想だにしなかったことが起こった。
ひとつふたつ作業を行うと、睡魔に襲われるのである。折角積み上げた物は自分の手で倒すわ、まっすぐ並べるべき物がごちゃごちゃと乱れていたりと散々な有様。当然効率もわるく、いつもなら30分もあれば終わる作業に2時間近く掛かってしまっている。
それでも自覚はあったので、ゆっくりとだがすこしずつ作業を続けていった。だが普段の4倍も時間が掛かっていれば、周囲もおかしいと思うのは当然だろう。それに、ときどきガクッとひざから崩れたり、頭をふらふらさせているのだから、誰が見ても居眠りをしているのは明らかである。

最初の休憩のとき、久しぶりにスニッファーでリタリンを吸っていたのだが、雨が降って湿度が高かったせいか、白い粉が固まってしまっている。それでも無理矢理吸い込んで作業に戻る。
いつもなら居眠りをするにしても2,30分はなんとか作業をこなしているのだが、今日に限ってはまるでのび太くんのように「1,2,3」で眠ってしまうのである。
自分ではよくわからないが、おそらく眠っている時間は1分にも満たないと思う。しかし目覚めてすぐにまた眠りに落ちてしまうのである。これでは作業など遅々として進みはしない。
端で見ていて目に余ったのか、あるいは上司に云われたのかは知る由もないが、他の作業をしていた女性社員が反対側から手を出し始めた。ひとりで2日間たのしく単純作業と戯れようという計画は脆くも崩れた。
おそらく見ればいつでも眠っているのだから、仕方がない。

昼休みのあと、ふたたびスニッフィングを試みるが、やはりなかなか鼻に入ってこない。仕方がないので蓋を開け、手に白い粉を落としーーなかなか落ちてこなかったがーー経口投与を行うことにした。といっても粉末にしてしまっているし、さまざまなクスリの他にハッカまで混ざっているので口のなかで、なんとも云えない味わいを醸し出す。

そんな努力も虚しく、午後も変わらず居眠りを続けた。
不思議だったのは、作業に入ってきた女性社員をはじめ、いつもなら何かを云いに来る部長だの課長が一切やって来なかったことだ。何度となく近くを通ったので気付いているはずなのだが。直属の上司は、いちばん離れた対角線上で作業をしていたが何度かは近くに来たし、前述の女性社員が何かしらを云いに行っているはずなので*1、声を掛けに来ても良いはずだが。
あまりにも大胆に、とにかくひたすら眠り続けていたので、もはや何を云っても無駄とあきらめていたのだろうか。

そんなこんなで所定労働時間8時間のうち、おそらく7時間49分くらい居眠りをし続け、終業時間を迎えた。
不思議なことに、帰宅して風呂に入り第三のビールを1本と、テキーラをコーラで割って何杯か飲んだがまったく眠くない。
云うまでもなく、家に着いてから途切れることなくリタリンを吸い続けてはいるが、そのせいだとは考えにくい。さらに作業中は常に立っていたわけだが、いまは座っている。
やはり環境の問題だろうか。
決して居心地の良い職場ではないからね。

*1:先日あるひとから、この女性社員がことある毎にあちこちで告げ口をして廻っているから気を付けた方が良いと云われた。もっともぼくが関わりたくないタイプの生き物だ!