新しい作業場は「死」の角度

じっさいには既定事実だったのかも知れないが、昨日の朝礼で普段は顔を出さない課長がやって来て人事の異動を発表した。
なぜこの時期にとか、なぜそういう配置をと思ったが、冷静に考えればなるほどと納得のいく異動だった。
冷静に考えるとは、即ち会社の利益を考えればということだ。


簡単に説明すると、いまぼくがいる部署は3つに分かれている。便宜上グループ1,2,3としておく。
昨年の8月にこの部署に来て、まずぼくはグループ2に配属された。ここでは主に製品のパーツをひとりひとりが受け持って作業を行う。自動車に喩えるならば、エンジン担当、タイヤ担当といったところか。(もちろん自動車部品はひとりでは扱えないと思うが)
当然納期らしきものはあるのだが、ノルマというほどではなく基本的に自分のペースで作業ができる。配属当初は容易な作業が多かったこともあり、未経験者で無能なぼくでもできそうな気がして安心した覚えがある。

ところが新しい環境に慣れ始めた8月の後半に、約1週間レンタル移籍へ出される。その話は、また後日。
戻ってくると今度はグループ1へ。ここはわりとおおきな製品を作っている。それだけ力も使うし、ハードな作業も多かったため、週末には端も握れないほど握力を失ったり、重い資材に指を挟まれ親指の生爪を剥がしたりもした。
作業はキツかったが、少人数だったこともあり居心地はわるくなかった。

ひと月くらい居ただろうか。
ふたたびグループ2に戻り順調に作業にも慣れてきた頃に、今度はグループ3へレンタルだ。
ここはいわゆるライン工程で、グループ2が作った部品を組み立てて梱包し出荷する。いわば最終工程だ。そのまま顧客のところへ製品が届くわけだから、細心の注意を払わなければならないのだが、信じられないくらいにミスが多かった。
各グループにはまとめ役の社員がいるのだが、グループ3には名義上はいるものの現場を仕切っていたのは契約社員だった。
きちんと仕事をすれば正社員も契約社員も関係はないのだが、この契約社員が親しい派遣社員と一日じゅう無駄話を続けていて、そのためにチェックすべき点を頻繁に見落とし、その度にトラブルになっていた。


話は戻るが、朝礼で課長は云った。

  • まえまえからグループ3に正社員がいないのはおかしいという意見が出ていた
  • 検査担当に、しっかりした人材を送り込む
  • 数々のクレーム、トラブルが売り上げ悪化に繋がっている(と営業サイドが云っている)

今回の人事異動は、まさにこのグループ3のためのもの、しかも件の契約社員が悪の元凶だと云わんばかりである。
そしてグループ3にはリーダーとして正社員を入れ、検査担当にも優秀な人材を送り込んだ。
この新しいリーダーというのは、現在のグループ1のリーダーなのだが、レンタルで行っていた短い間のみの付き合いだったが、間違いなく仕事のできる人間だった。
その一面を早速今日体験した。

新人事は9/1付けで、実質9/3からなのだがグループ3を改革すべく、すぐ隣で作業をしているぼくたちのスペースを移すことになった。どうやら広く余裕のあるスペースで作業をしようという目論見らしい。
そんなわけで今日の午後は、移動というかお引っ越し。使い勝手はじっさいに作業をしてみないとわからないが、ごちゃごちゃと狭苦しかった感じは解消された気がする。

ただ問題がひとつ。
今度のぼくの作業場所からは、係長だの課長だのが待機する場所が見える。こちらから見えるのだから、向こうからも見えるのだろう。20〜30mは離れているが、うとうとと眠っていたりすると大目玉を喰いそうで、些か不安である。
明日からは多めにリタリンを持って行くことにしよう。