Lollipop sonic『Favourite Shirts and more』

2枚のCDのうち、1枚にはジャケットが付いていた。それを見てぼくはまさしく絶句。言葉を失った。なぜならあらかじめ「送る」と云われたものとは違っていたから。そしてそれは紛れもなくぼくの音楽人生を変えてしまったアーティストの、激レア音源だったからだ。

いまや知る人ぞ知る(知らない世代も多い)存在となってしまった感もあるフリッパーズ・ギター
何を隠そう90年前後ぼくは、フリッパーズ・ギターに出会い、そこからC86系アノラック〜UKギター・ポップにハマリ輸入盤店へ入り浸り、元ネタ探しのため中古盤店に通い出しサントラや60-70年代のポップ・サウンドへ傾倒しだし、現在に至るのである。*1

そのフリッパーズ・ギターのアマチュア時代、ロリポップ・ソニック名義の音源(22トラック)である。もはや伝説といっても良い音源発掘である。
これまで、これも伝説のファンジンと呼ぶにふさわしい「英国音楽」の附録として付けられたソノシートに収録した音源は聴いたことがあった。

今回のCDに収録されているうち、前半11トラック"Favourite Shirts"はデビュー前に自主製作されたカセットで、その存在自体は知っていたが聴いたことも実物を見たこともなかった。
じっさいに聴いてみて、とにかく、ただ感動したというひとことに尽きる。

メジャー・デビューに際してレコード会社から改名を提案され、急遽フリッパーズ・ギターを名乗りだしただけあって、デビュー・アルバムのほとんどはロリポップ・ソニック時代に作られた楽曲であり、この"Favourite Shirts"のほとんどは、その原型とも云うべきものである。

Three Cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった

Three Cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった


残りの11トラックは"Favourite Shirts"収録曲のデモやライヴ・トラック。あっと驚くカヴァーや、まったく発表されていない曲*2などヴァラエティに富んでいた。

マチュア・バンドのデモ・テープゆえ、音質はかなりわるい。それでも聞き慣れたフリッパーズ・ギターとはまたちがった、初期衝動をじゅうぶんに感じることができた。
リリースされた3枚のアルバムはいずれもソフィスティケイテッドされていたが、このCDのトラックはまさにオルタナティヴ感に溢れていた。

レア音源ということで、いわゆる「お宝」なのだが、プレミアム云々ではなく、ぼくの青春を閉じ込めた、ほんとうの宝物として一生モノになりそうだ。

*1:もうひとつの柱はピチカート・ファイヴ。ジャズやソウルを学んだ

*2:フリッパーズ・ギターは1st.リリース直後、メンバーがふたりになり、以後の楽曲は彼らの共作となる